この夏から年収156万~370万円の70歳以上を対象に、「高額療養費制度」のひと月の限度額が4万4400円から5万7600円に引き上げられた。それでもこれを使えば、多数の治療を受けても自己負担分はその範囲で済む。
しかし、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によれば、60歳代で入院した患者の自己負担額(高額療養費制度の使用後)は、平均21万7000円。50万円以上負担した患者も約1割いた。
どういうことか。高額療養費の適用外となる医療経費が加わることによって負担額が増しているのだ。
「差額ベッド代や日用品代、入院にかかる雑費は全額自己負担です。とくに都市部の病院の個室だと1日2万~4万円台の差額ベッド代になることもある。タクシーなどの交通費、松葉づえなどの用具代を含めれば、諸経費はただでさえカツカツの高齢者の生活を圧迫します」(医療経済ジャーナリストの室井一辰氏)
高齢者は症状が長期化したり再発を繰り返したりで、医療費は増すばかり。“生活を考えたら病気になれない”という精神的重圧がさらなる病を招くこともある。
それでも医療費の支え手になれというのであれば、「病気になっても通院・入院はするな」と言っているに等しい。
※週刊ポスト2017年8月18・25日号