中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

若者がタクシーに乗るのは贅沢なのか? 50代男性が抱く複雑な劣等感

「私よりも20~30歳も若い方が平然とタクシーに乗っているんですよ……。彼らよりもここまで長く社会人生活を経験しているというのに、私は自由にタクシーに乗れないような人生を送っている。他人と比較しても意味がないのは分かりますが、あんな若者が躊躇なくタクシーに乗る中、私はバスに乗るよりも歩いた方がいいのでは……みたいに考え、節約をしようとしているのが惨めでなりません」

 A氏は住宅ローンを返済中で、かつ将来の有益な投資になりえる3人のお子さんの大学進学に向けた貯金をしているだけに、そんな気持ちを抱くのはおかしいのでは、と伝えましたが、A氏はとにかく「若者がタクシーに乗るのを見るのが切なくて仕方がない」と言います。

 まぁ、確かにタクシーは贅沢品です。私の場合、どうしようもなく疲弊している時は、タクシーで仕事場まで行くことはあります。高速道路を使い、約3500円かかります。しかし、地下鉄であれば195円です。どんだけ贅沢をしているのか、と思うほか、3500円を支払うことへの罪悪感もあります。

 しかしながら、「切ない」は言い過ぎでは? とA氏に言うと、これはあくまでも感情の問題だというのです。

「大抵の場合、タクシーの運転手さんは中高年、場合によっては初老です。そういった人が恭しくドヤ顔の若者を後部座席に乗せ、若者は足を組んでふんぞり返ってスマホを見ながら『赤坂!』みたいに言うわけですよ。いや、そんな人ばかりではないのは分かりますが、そういう人も見ます。今、夏の暑い中、信号待ちをしていると、そんな姿の若者をタクシーの中で見ることがよくあります」(A氏)

 いやはや、これはさすがに被害妄想が過ぎるのでは、とも思うのですが、私自身も30代前半の頃、タクシーに乗った時に運転手から嘆かれたことがあります。夏の暑い中、短パン・Tシャツ・サンダルで乗車したのですが、運転手が途中でこう言ったのです。

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