こうしたイナゴ投資家による回転売買が作り出したチャートは、その形状から「イナゴタワー」と呼ばれるが、「7月下旬から8月初旬にかけてイナゴタワーの崩壊が相次ぎ、いまや信用取引で全力売買していたようなイナゴの屍が累々と積み上がっているような状況。相場の体感温度は冷え切っています」というのは、カブ知恵代表の藤井英敏氏。それにしても、なぜここにきてイナゴタワーの崩壊が相次いでいるのか。
「信用取引の規制強化や好材料出尽くし、決算見通しが悪かったなどきっかけはそれぞれ個別にありますが、全体の理由は判然としません。ただいえるのは、ツイッターなどで特定銘柄を取り上げてイナゴを煽る“殿様イナゴ”とも呼ばれる連中に踊らされて次々と買い上げられた材料株がピークアウトするなか、利益確定の売りが伝播していったということでしょう」(藤井氏)
「だったら手を出さなきゃよかったのに……」というのは簡単な話だが、その一方でイナゴタワー建設中の爆発的な株価上昇は資金が潤沢でない個人投資家にとって魅力的に映るのだろう。それではアクティブな個人投資家が、イナゴタワー崩壊に巻き込まれず生き残るにはどうすればよいのか。前出・藤井氏は、こう語る。
「出来高が急増して株高に転ずる『初動』に乗ることは、勝つための投資行動として間違いではありません。ただ、問題は、そこからさらに欲張って利食いするタイミングを逃し、やがて損切りすらもできなくなること。それから『初動』に乗れずに投資タイミングを見計らって石橋を叩いて参戦したつもりなのに、実はそこが天井圏で高値掴みをしてしまうというケースもあります。
そうならないためには、まず『初動』に乗る。目安としては、出来高が急増して株価が前日比10%以上上がり、売買代金が過去5日間の10倍以上まで膨らんでいるような銘柄です。翌日でも間に合うと思ったらリスクは高くなるでしょう。2日目には株価が20%も30%も高くなるケースもあるので、結果的に高値掴みになりかねない。初動に乗れなかったら、見送る勇気も必要です」