首相が私的年金に加入しろというのは、老後の生活に“公的年金が払えないから自分で何とかしろ”という意味に他ならない。現役時代にコツコツ年金保険料を支払ってきた高齢者は「自助努力」と言われても納得がいかないはずだ。
現在の高齢者がサラリーマン時代の保険料の総額を計算すると、驚くべき金額になる。
厚労省の標準モデル(現役時代の平均月収40万円で厚生年金に40年加入)の場合、支払った年金保険料の総額は2948万円に達する。大卒総合職の60歳定年時の退職金(一時金と企業年金の合計)は大企業が多い経団連の調査で約2374万円、東京都産業労働局がまとめた中小企業のケースで平均1123万円だから、老後の蓄えとなる退職金以上の金額を国に保険料として納めてきたのだ。これは「自助努力」そのものだろう。
高齢者を75歳まで働かせることで年金を減額し、“老後の保障は私的年金に加入せよ”とはどの口がいうのか。
※週刊ポスト2017年9月1日号