家族と、友人と、恋人と、一人で……旅行をする際の最大の関心事といえば「何を見るか」だが、それと同じぐらい大切なのが「どこに泊まるか」だ。後々思い返すと、観光地よりもホテルの方が印象に残るというのはよくあること。これまでフリーライターとして全国を飛び回ってきた金子則男氏が、「これまで出会った珍しい宿」について語る。
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仕事柄、全国各地のホテルに泊まってきましたが、特に危険な思いをしたことはありません。ただ、「もし火事になったらどうなるのかな」と思うような宿に泊まったことは何度かあります。その中でも印象的だったのが、北海道のある商業都市で泊まったホテルです。
不特定多数の人間が利用する宿泊施設は、消防法により防火安全対策や避難ルートの確保、建築基準法に伴う防火規定を守ることが定められており、それらの基準を満たしている施設にはそれを示すマークが記されています。しかし宿泊施設にチェックインする際、そういった基準や、避難通路をいちいち確認しない人も多いのではないでしょうか。少なくとも私は一度もしたことはありませんでした、“その宿”に泊まるまでは。