「私はてっきり、ドラムセット一式を買わなきゃドラムの練習なんてできないと思ったんです。ところが先輩に楽器屋に連れて行かれて買わされたのは、ドラムスティックと表面にゴムが貼られたパッドだけ。後は『好きな曲を聞きながらこれ(パッド)を叩け』と言われました」
そしてひたすらパッドをポコポコ叩く日々を続けたSさんだが、やはりそれだけでは今ひとつ面白くない。そのことを先輩に話すと、先輩は次のアイデアを教えてくれた。
「いきなり『お前は毎週買っているマンガ雑誌があるか?』と聞かれたんです。あると答えると、『それを3~4冊重ねてガムテープで巻いて固定しろ。そうしたらそれをドラムセット状に置いて、それを叩け』と言われました。
正直、メチャクチャ貧乏臭いなと思ったんですけど、実際にやってみるとドラマーになったような気がするんです。先輩は『○○(超有名バンド)の××(超有名ドラマー)も、家じゃこれで練習してたんだぞ』と言っていました。本当かどうか分かりませんけど」
そして“マンガ雑誌のドラムセット”で練習を積んで初ライブを成功させたSさんは、「本当のドラムを叩くのは、バンドの練習でスタジオに入る時だけ」というスタイルのままドラムという趣味を20年近く続け、今ではその腕前はセミプロレベルにまで達しているという。Sさんに、改めてドラムという趣味にどのくらいお金をかけたのかを尋ねると、
「ドラムスティックはすぐダメになってしまうので、年3万円。一番叩く頻度が高い『スネアドラム』は自分のものを持っていて、これが8万円。そしてそこに張る『スネアヘッド』が年1万円。ヘビーメタルは両足を使うので、それ用の『ツインペダル』が6万円。シンバルも数枚持っていて、全部で10万円。スタジオ代は月2回、1回3時間をメンバーで割り勘にすると月5000円ぐらいです」
とのこと。