75歳受給時代になると景色は一変する。年金がないのだから、“貯蓄をできる限り80代まで温存”という前提が難しくなる。無理をして入居一時金を捻出しても、「高級ホームの月額利用料を年金だけでは賄えない。蓄えが尽き、支払いが滞れば規定により退去させられるケースもある」(同前)のだ。
かといって80代で貯金はゼロ、毎月の年金収入だけという状況で入れる施設を選んでも、理想の老後とはほど遠いというほかない。
「民間でも入居一時金ゼロ、月額13万円前後のホームはありますが、病院の4人部屋のような居室で、仕切りのカーテンがないような施設もあります。ケアの方法でも、決められた時間に一斉にトイレ介助、おむつ交換になるところもある」
要介護3以上であれば多床型の特養を希望できるが、やはり現実は厳しい。
「待機待ちを覚悟する必要がありますし、その間は短期間しか入所できないリハビリに特化した施設を転々とすることになりかねない」(ベテランケアマネ)
至れり尽くせりの高級ホームから、いつ入居できるかわからない特養の待機待ちへ、という落差は大きい。
※週刊ポスト2017年9月8日号