そして私が最後に温泉に行き、髪を乾かそうとすると、その不満の原因が判明しました。脱衣場にはドライヤーが数台置いてありましたが、ドライヤーの風力が猛烈に弱く、とても髪を乾かせる代物ではなかったのです。私が部屋に戻り、「ドライヤーの風力がすごい弱くなかった?」と言うと、友人たちからは“我が意を得たり”とばかりに、ドライヤーに対する不満が噴出。それ以外のアメニティが極めて上等だっただけに、大きな不満が残りました。
しかしそれから数年、その時の旅行のメンバーと会うと、「あのホテルのドライヤー、強いのに変わったかなぁ」「あの弱いドライヤー、まだあるかなぁ」と、一度は必ずドライヤーの話題になり、髪が薄くなった友人は、「あのドライヤーでも乾くんじゃない?」とイジられ、誰かが旅行に行った話をすれば、「そのホテルはちゃんとしたドライヤーだった?」という冗談が飛び、気がつけばドライヤーが6人の良い思い出になっているのです。
まさかホテルがそこまで計算してパワーの弱いドライヤーを使っていたとは思いませんが、今となっては、一生笑えるネタを提供してくれたあのホテルには感謝しかありません。良き思い出というのは、時にアメニティグッズから生まれることもあるようです。