1991年は15.3兆円あった市場規模が、2013年には10.5兆円と3分の2にまで縮小し、『誰がアパレルを殺すのか』という衝撃的なタイトルの本が登場するなど、不振を極める日本のアパレル業界。「服が売れない」と叫ばれて久しい昨今、関西の雄『阪急うめだ本店』の婦人服売り場だけは売り上げが右肩上がりだという。
躍進のきっかけは、売り場の大改装。年齢にとらわれず嗜好性を重視した売り場づくりを目指し、婦人服売り場全体を巨大なセレクトショップへと変貌させたのだ。
顧客ニーズに応える売り場づくりが成功し、婦人服売り場だけでなく、多くの売り場が好成績を残している阪急うめだ本店。その根底に流れるのは、創業者・小林一三氏の理念だろう。
1873年、現在の山梨県韮崎市に生まれた小林氏は、慶應義塾(現在の慶應大学)を卒業し、三井銀行勤務を経て、1907年に阪急電鉄の前身・箕面有馬電気軌道を創立する。当時、ほとんど人が住んでいなかった土地に電車を通し、沿線に住宅を建ててローン販売をするという画期的なビジネスモデルを確立して乗客を増やした。
沿線に動物園や温泉、宝塚歌唱隊(現・宝塚歌劇団)、大阪阪急野球協会(後の阪急ブレーブス、現オリックス・バファローズ)を配して、集客を増やすという手法も大きな注目を集めた。