円安やインフレの加速が日本経済に迫っている。そんな時に考えたいのが金投資だ。どのような投資戦略で臨むべきか、経済アナリストの豊島逸郎氏が解説する。
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長期で見ればドル建て金価格の上昇が望めるなか、世界的に見て最も有利な立場にあるのが、日本の投資家といえる。最大の要因は為替だ。
為替の動向は基本的に金利差や通貨供給量の差によって決まる。ドルのばらまきをやめ、利上げまで視野に入れる米国に対し、日本はこれからさらに円をばらまこうとしている。当面はドル高円安傾向が続くのは間違いない。そうなると、ドル建て金価格が下がったとしても、より円安に振れることで円建て金価格は上昇する。つまり、円建て金価格は下げにくく、上げやすい環境にあるのだ。
加えていえば、政府・日銀はインフレ率2%を必達目標としており、なんとしてもインフレに持って行こうとしている。
この「円安」と「インフレ」という2つのリスクは、恩恵を受ける人とそうでない人の格差を顕在化させようとしている。ただでさえ消費増税の痛みがあるなかでは、そのようなリスクをヘッジする手段を備えておくことが自らの資産を減らさないことにつながる。
幸いにも、円建て金価格はドル建て金価格の下落が円安のピッチを上回っているため、依然、安値圏にある。しかも、2015年のドル建て金価格は大きな上昇までは見込めない一方、下値も限定的といえる。
そうであるならば、今後の長期上昇局面を見越して、安値圏にあるいまのうちに資金の一部を金に振り向けておくことが「円安ヘッジ」「インフレヘッジ」という2つの意味で得策といえるのではないだろうか。
慌てる必要はない。国内外ともに先行きが不透明なうちは、コツコツと「純金積立」をするか、金のETF(上場投資信託)を少しずつ買っておけばいいだろう。さらにドル建てで1100ドル台に低迷したり、円建てで4000円に近づいたりするほど下がろうものなら、「安値で仕込むチャンス」と見て買い増すという手もある。
国際金価格が2000ドルになった時に、1ドル=120円であれば、単純計算で円建て金価格は7000円を突破する。万が一、アベノミクスが大きなリスクにつながった場合、さらなる円売りを招くだろうが、そうなれば円建て金価格はさらに上昇しているはずだ。自らの資産を守るためには、ここはじっくり構えて臨みたい。
※マネーポスト2015年新春号