景気回復のカンフル剤として、安倍政権が続けてきたのが大規模な財政出動だ。8月末にまとめられた2018年度予算の概算要求は4年連続で100兆円超え。政権の重点政策に予算を優先配分する「特別枠」への要求が相次ぎ、歳出規模はどんどん膨れあがってきた。
だが、状況は急激に変わりつつある。小黒一正・法政大学教授が解説する。
「国の借金が1000兆円を超えている状況下で、補正予算を含めなおも歳出を拡大することについて、政権はこれまで“景気が上向いて税収も増えているから問題ない”と説明してきました。ところが直近の2016年度決算では、当初予算の見込みより税収が約2兆円下振れする状況が生まれた」
もともとアベノミクスにおける財政出動の目的は、本格的な成長軌道に入るまでの間、〈景気を下支えする〉(2014年総選挙、政権公約)ことだった。それが現実には、“歳出を増やしたけれども、景気は下降線に入ろうとしている”のである。
国民生活への影響は甚大だ。遠くない将来の負担増ラッシュというかたちでツケを払わされることになる。