子どもが親や兄弟に金をせびるのはどこにでもある話。幼子にねだられれば親も悪い気はしないかもしれないが、それが成人で、しかも脅迫的だった場合、犯罪にはあたらないのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
30代の甥のことで悩んでいます。甥は定職に就かず、脅すように兄に金の無心をしているようです。兄もそのつど渡しているようですが、最近は「きつい」と弱音を吐いています。子にせがまれ親が金を渡すのはよくあることですが、成人になってからも強引にせびってくるのは、犯罪ではないでしょうか。
【回答】
子が親に金をせびるのは、いつの世にもあることですし、家の金を黙って持ち出す不良息子も少なくありません。子が親に金をせびり、親が渋々ながらこれを渡しても、任意の支払いである限り、民事でも刑事でも問題にはなりません。しかし、断わった親によこさないと…と脅かして、怖くなった親から金の支払いを受ければ恐喝になります。
恐喝は本来、10年以下の懲役に処せられる重大な犯罪です。ただし、刑法244条では「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する」と規定しています。
第235条というのは窃盗罪のことです。夫婦や親子などのごく近い親族間の窃盗(「親族相盗」)は罪にはなりますが、刑罰を科さない特例としています。これは法が家庭に立ち入らない思想に基づくもので、家庭内のことに国は口を出さないということです。