その先の策略がある。〈所得代替率50%の維持〉を錦の御旗として、保険料の再引き上げを求めるとみられているのだ。“受給開始年齢の引き上げについては妥協したのだから、保険料は上げさせてもらう”という理屈だ。
「その際に、保険料アップの新たな“目標”として持ち出されるのが、2014年の財政検証で国がわざわざ示した『25.9%』という保険料率です」(北村氏)
国民との約束などいくら破っても構わないと考えていなければ、こんなやり口は実行できない。この保険料率25.9%が実現すれば、サラリーマン世帯への打撃は凄まじいものとなる。
北村氏の協力のもとにまとめた図を見てほしい。2017年現在の厚生年金負担率は18.3%(労使折半)。これに健康保険、雇用保険、介護保険、税金を加えると、実際の給料に占める天引き分は45.85%に達する。
なお、手元に給与明細のある人は、それを見ると税・保険料の天引き額が額面給与の30%前後となっているはずだが、別掲図では「本来サラリーマンの収入としてカウントされるべき社会保険料の会社負担分も加えて試算し、より実態に近い“天引き率”を算出」している。
つまり、すでにサラリーンマンは給料の半分近くを国に納めているのだ。さらに、北村氏の警告通り、2019年以降に年金の保険料率が25.9%まで上がった時代は大変な状況になる。
「厚生年金の保険料だけでなく健康保険、雇用保険などの保険料率も負担増が続くと考えられ、図のように給料の60%超が天引きされる時代になる。つまり、手取りが給料の40%弱という異常な事態が起こるのです」(同前)