サラリーマンは狙われやすい
毎月の給与明細に額面で〈30万円〉の給与がある会社員で考えると、どうなるか。2017年時点では厚生年金の自己負担分や各種保険料を除いた手取りは月額およそ23万3000円だが、2019年以降に年金改悪が実行されれば、月額およそ20万9000円まで下がる。年収換算で実に約28万円のダウンだ。
本来ならこれほどの負担増は“取られる側”の反発を恐れて国もそう簡単には実行できない。だが、サラリーマンの場合、年金保険料は給料から天引きされるので、負担増に気づきにくい。流通業に勤める30代男性はこう語る。
「総務の先輩と飲んでいて、厚生年金の保険料が毎年上がっていることを初めて知りました。給料はほとんど上がっていないのに、4年前より年間2万円以上、厚生年金の負担が増えていると教えられて愕然とした。給与明細で何が引かれているかなんて細かく見ないのをいいことに、知らない間に負担を増やされているようで腹立たしい」
何年かにまたがる段階的な引き上げならなおさらだ。それこそが“国の狙い”である。
「現にこの13年間、保険料は毎年少しずつ引き上げられましたが、“何だか給料が増えないな”という漠然とした感覚はあっても、国に取られたと実感した人は少なかったはずです。年金財政が行き詰まる中、天引きされる保険料率の引き上げは、常に国にとって“妙案”なのです」(北村氏)
この年金改悪は“負のスパイラル”も生み出す。
「年金保険料は労使折半の負担なので、大幅アップは個人の懐だけでなく、企業の収支にも影響を及ぼすことになります。そうなると保険料負担増を意味する賃上げに対して、企業はどんどん消極的になっていくでしょう」(同前)
給料が増えずに保険料だけが上がり、“年を追うごとに手取りが急減する”という悪夢のような事態さえ想定されるのだ。