中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「発泡酒・新ジャンルを飲むヤツは何を考えているのか?」とビール偏愛者

 これらの安い「ビール風飲料」は、酒税法の穴を突いたもので、「イノベーションの勝利」といった文脈で称賛されたものです。当時は「ビールと比べてやっぱマズい」といった評価は多かったものの、各社の技術革新とたゆまぬ努力により、「ビールと比べてもわからない!」という結果になりました。今ではこれらの方が好きだと考える人も少なくないことでしょう。特に若者は酒を飲み始めた頃から発泡酒及び新ジャンルを口にしているため、むしろビールに対しては「重い」といった印象を持つ方もいるようです。

 ビールって350ml缶のうち、77円が税金というとんでもない高税率の商品です。発泡酒は47円、新ジャンルは28円です。ビール会社の人と話をするとこう話されました。

「もちろん、発泡酒も新ジャンルにも自信はありますが、本当はビールの方がおいしいと思います。しかし、値段のことを考えると、発泡酒・新ジャンル、特に新ジャンルを開発せざるを得ないし、これらのニーズがもはや高まっている以上、作らざるを得ない。より安い新ジャンルの方が今や発泡酒よりも売れています。これから酒税法が改正され、2026年にはこれら3つの税金を均一化しようという動きも出ており、ビールメーカーからは反発の声も出ています。『一体何のために安いビール風飲料を開発したんだよ……』という気持ちでいっぱいです。もう多くの方に受け入れられているのですから、『今さらなんだよ』と思います」

 1990年代後半、サントリー、サッポロという「二弱」が発泡酒を売る中、キリンとアサヒの「二強」は発泡酒を出していませんでした。しかし、安売り傾向に耐えかねたのか、1998年にキリンがまずは「淡麗〈生〉」を出し大ヒットに。となれば、ビールのシェア1位を誇るスーパードライを擁するアサヒも追随するか? と思われましたが、当時の瀬戸雄三社長は「発泡酒はビールのまがいもの」といった発言をするなど、ビールを守ろうとしていました。それでも時代の趨勢には抗えなかったのか、アサヒも2001年に「本生」を出し、大手4社全てが発泡酒を出し、その後「新ジャンル」の誕生に至るのです。

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