では、年金支給水準はどこまで下がる可能性があるのか。厚労省は2014年6月に、年金制度の「財政検証」の結果を発表した。そこでは経済成長率の前提が異なる8パターンの将来推計が示されており、ケースAからケースEの5つのケースは将来的にも厚生年金の所得代替率50%が維持できる、つまりは現役世代の手取り収入の50%以上の年金を保障できるとしている。ただし、この5つのケースはすべて、65~69歳男性の労働力率は67%と3分の2の高齢者が働く前提となっているのだ。
一方、高齢者の労働力率が現状と変わらないとしたケースFからケースHの場合では、所得代替率は最悪35~37%まで低下する。これは、年金が実質的に4割もカットされていくことを意味する。
この財政検証が言わんとしているのは、今のままの年金制度を続けていれば、年金支給額は確実に減っていく。それが嫌だというなら、みんな70歳まで働いて年金保険料を払い続けろということに他ならない。これが安倍政権の提唱する「一億総活躍社会」の正体であり、70歳支給を国民に納得させる布石でもある。実際、年金を確実に下げていき、高齢者が音を上げたところで「生活が苦しいのだったら支給開始年齢を遅らせましょう」と言い出すに決まっている。
今後の生活防衛術として、少なくとも現在40代より下の世代は、年金が現行支給額の4割カットになると思って生活設計をしておくべきだろう。現行支給額は、平均的給与で40年勤務したサラリーマンの夫と専業主婦の夫婦の場合、2人で月額約22万円。それが4割カットとなると、夫婦で月額約13万円しかもらえなくなる。つまり、現役時代から、将来は夫婦で月13万円で暮らせる生活を考えておく必要があるということだ。