そこで私が運用責任者を務める「ひふみ投信」では、解散発表前には北朝鮮リスクの高まりから15%近く持っていた現金比率を7%程度まで下落させ、日本を代表する大型株を大量に組み入れ、大型株主導の株高に備えることにした。ひふみ投信の運用レポートをご覧いただければ一目瞭然だが、9月末時点の組み入れ上位銘柄のなかには、それまで目にすることのなかった三菱UFJフィナンシャル・グループやNTTドコモ、トヨタ自動車、新日鐵住金などが並ぶようになった。
正直、小型グロース(成長重視)株を中心に運用してきたひふみ投信にとって、大型バリュー(割安重視)株優位の相場展開は苦手なところがある。だからといって手をこまねいていれば負けてしまうだけで、ボクシングのクリンチのように、ここでいかに柔軟に食らいついていくかがファンドマネージャーの腕の見せどころだろう。私たちの投資の中核となるのは成長株投資であることに変わりはないが、一方でその時々の投資環境に応じて、多様な投資戦略を実行している。実際、解散総選挙の発表以降、大型株は好調に推移している。
ここでもっとも重要なのが、その大型株をいつ手仕舞うか、という問題である。そもそも国政選挙は、テロや戦争、災害、あるいは金融政策の転換などと並んで株価を大きく動かすイベントとなってきたが、いつまでも続くものでもない。「噂で買って事実で売る」という相場格言があるように、従来は結果の出る投開票3日前に売るのが“王道”だが、今回の相場は選挙の結果次第でさらに続く可能性もあると見ている。
その理由は、まず小型株主導の相場が長く続きすぎた反動も十分に考えられる。加えて自民党と希望の党が選挙後に連立を組むという“ウルトラC”があれば、むしろ政権基盤が安定することをマーケットは好感し、さらに上値を追う展開まで予想されてくる。そうなった場合、年内に日経平均は2万2000円になる可能性も十分あり、目の離せない展開はまだまだ続きそうだ。