息抜きは大切だが、それにかけるお金は人それぞれ。40代の男性Aさんは、医師という堅い職業のかたわらパンク・バンドを組み、遠く海外までライブに出かけたこともあるという。
Aさんが音楽に目覚めたのは高校生の頃だ。当時はバンドオーディション番組『三宅裕司のいかすバンド天国』(TBS系。通称「イカ天」)が大ブームの時期で、Aさんはパンクに心酔。学園祭ではバンドを組み、海外のパンク・バンドの曲を演奏したAさんだったが、開業医の父のもとに生まれた彼にミュージシャンという道を選択する余地はなく、医大に進学した。
大学時代もパンクへの思いを断ち切れなかったAさんは、大学の軽音楽部に入り、髪を金髪にし、ライブ活動を続けていたが、それが出来たのも2年生の中頃まで。髪を黒く染めて勉学に勤しみ、医師国家試験に合格。大学病院に勤務したAさんができることは、白衣の下にパンク・バンドのTシャツを着るぐらいだった。しかし「気がつけばもうすぐ40歳」になった頃、一念発起する。Aさんが語る。
「医者という仕事はもちろんやりがいがありますし、10数年やってきて、ようやく人間の身体というものが分かってきたような気がしています。だから医者という職業を選んだことはまったく後悔していません。しかし私は同時に、どうしてもまたバンドがやりたかった。そこでまず、昔のバンド仲間とバンドを組んでライブに出演し、“対バン”の相手と仲良くなり、そこからバンド仲間を紹介してもらって……という形で、今のバンドを組みました」