そこで他人の書いた論文を自分のモノのように偽って審査を受け、あわよくば卒業資格を得ようとするのは「偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者」として、刑法233条の偽計業務妨害に当たります。その場合、3年以下の懲役、又は50万円以下の罰金で処罰されかねないことになります。
もし、集団で組織的に偽卒論を調達したりすると悪質であって、業務妨害の程度も大きくなり、この罪に問われる可能性があります。仮に、娘さんひとりの出来心程度であれば、被害の度合いから業務妨害とまではされなくても、軽犯罪法第1条31号の「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」とされ拘留、又は科料で処罰されるかもしれません。それだけでなく、発覚した場合、大学の定めた学則の重大違反になるでしょうから、退学処分などを受け、卒業できないどころか、学生の身分も失いかねません。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2017年10月27日号