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トンチン保険 反道徳的との批判あっても各社参入する理由

 こうした保険の“元祖”が、「トンチン保険」である。その歴史は古く、名前は17世紀イタリアの銀行家、ロレンツォ・トンティに由来する。

 トンティは、当時のフランスの財政難を救うため政府にこの保険の導入を進言したとされる。国民から集めた保険料を運用し、利息分のみを年金として支払えば、年金原資分が国家に入るという提案だった。欧米では17世紀に販売が開始され、フランス、オランダなど各国で人気を博してきた。

 日本では「トンチン保険」は「死者の保険料で生存者が得する反道徳的商品」という批判もあり、これまで販売されてこなかった経緯がある。それがなぜ、ここにきて各社が参入し始めたのだろうか。

 日本人の平均寿命は、男性が80.98歳、女性が87.14歳(2016年)。20年前に比べて、男性は3.97歳、女性は3.55歳延びている。しかし、長生きする人が増える一方で、老後生活への不安は募るばかりだ。こうした背景が「長生きするほど得をする保険」の需要を後押ししているという面は大きいだろう。

 さらに、保険会社側の事情もある。保険数理の専門家で、慶應大学理工学部特任教授の山内恒人氏が解説する。

「背景にあるのは『低金利』です。1980年代後半に5.5~6.25%あった生命保険の予定利率は、現在0.25%と非常に低くなっている。あまりに予定利率が低いため、利回りの高い売れる保険を設計できなくなっていた。

 そこでたどり着いたのが、トンチン保険だった。従来の保険は、支給前に亡くなった契約者に支払った保険料を全額返していた。しかし、トンチン保険は7割を返し、3割を残った契約者に振り分けることで、低い保険料に抑えつつ、より利回りの高い商品を作ることができるわけです」

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