両親の家は几帳面な父が家計管理をしていたことも初めて知った。父の部屋にあった“大事な物入”と書かれた箱には、通帳などがキレイに整理されていて、終活の大切さを痛感させられた。この父に代わり、母のお金を管理すると思うとさらに滅入った。
幸いキャッシュカードの暗証番号はすぐにわかり、葬儀の諸費用は事なきを得た。
怒涛のような相続と名義変更の手続き、わからないまま契約させられていた通販などの整理には1年近くかかった。自宅に戻った母の生活費は、私がキャッシュカードを預かって現金を渡すようにした。
それでも認知症の母には、月数万円の家計管理が重荷だったらしい。少額でも札で払ってしまうため財布はいつも小銭でパンパン。人生初の独居の不安も重なったのだろう。いわゆる物盗られ妄想が激化。
「お金がないーッ!」「飢え死にさせるつもりーッ?」と、それはもう大変だった。
妄想激化はお金のストレスが原因と気づいたのは、私の自宅近くのサ高住(※サービス付き高齢者向け住宅)に転居してから。3度の食事を食堂にお願いし、日用品は私が買い届けるのでキャッシュレスでもいられる。するとピタリと物盗られ妄想がやんだのだった。
今では財布の中の数千円で、近くのコンビニで本や雑誌を買うのが楽しみ。小銭も使いこなせるまでに復活した。