2015年の税制改正で相続税を払わなければならない人が急増したことなどを背景に、自分の遺産が国に渡るくらいなら、自分が望む人や団体へ寄付したいと「遺贈」する人が増えている。だが、遺言書に不備があったり、遺族の意向を無視すると、本人が望んでも遺贈されないケースもある。そこで、押さえておきたい正しい手続き方法を紹介する。
遺贈するには遺言書の作成が必須
配偶者も子供もいない人が遺言書を残さず亡くなると、その財産は、会ったこともないような遠縁の特別縁故者か国のものとなる。つまり、“他人にあげる”感覚に近い結末となるのだ。
それがいやだからと、生前に遺贈手続きをする人が増えているわけだが、遺贈手続きの際、最も重要なのが、この遺言書なのだ。終活に詳しい立教大学社会デザイン研究所研究員の星野哲さんは、こう話す。
「遺贈を考えているなら、相続人がいない場合だけではなく、いる場合でも、遺言書を正しく書き残すことが重要です。そうしないと、本人が望んだのに遺贈されないケースもあります」(星野さん)
そもそも、遺贈寄付には、【1】本人からの遺言による遺贈、【2】相続人からの相続財産寄付、【3】信託の受託者からの寄付の3種類の方法がある。
遺言書には、その中のどの方法で遺贈をするか、どこに、いくら、どういう形で、誰が代行して遺贈するかなどを記載する必要がある。