「所得控除が155万円縮小されると、実際は給料が1円も上がらなくても、税金の計算上は年収(課税所得)が155万円増えたことになります。その分、税金が増える。このケースでは所得税率の区分が10%から20%に一段階上がり、所得税と住民税が大幅な増税となった」(税理士)
財務省にとって所得控除の見直しとは、所得税の税率を1%も引き上げずに、控除額を縮小させるだけで思うままにサラリーマンから税金を搾り取ることができる“打ち出の小槌”のような増税術なのだ。
逆に、妻と子供2人を養うAさんにすれば、給料は増えないのに45万円も増税され、家計はいっぺんに火の車になる。
それでも財務省は“これまでが優遇されすぎていただけ”という論理で押し通す構えだ。
もう1人、定年後に会社で再雇用され、年収354万円で働く62歳のBさん(年金はまだ受給していない)のケースでは、給与所得控除が123万円から13万円に減らされ、所得税と住民税を合わせると税金が2倍、約22万円の増税となる。元々合わせて約22万円だったのが約44万円になるのだ。税法が専門の浦野広明・立正大学法学部客員教授(税理士)が指摘する。
「そもそも給与所得控除は会社勤めのために必要な経費だけではない。サラリーマンは労働力という資産を会社に提供して報酬を得ている。その資産を維持するために必要な労働者の家族の維持費(生活費)も含めて給与から控除し、課税しないというのが本来の考え方です。その控除をギリギリまで削るというのは、財務省が増税したいがための屁理屈です」
※週刊ポスト2017年11月17日号