中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「ブラック労働」の経験は仕事人としての成長をもたらすか

 ……とまあ、こんなやり方をしているものだから、時間はかかるわ、ミスもあるわで編集者としても「おーまーえーはー!」と尻拭いをしなければならない状況だったと思います。しかもどれだけ取材をしようが「1ページ1万5000円」といったギャラの規定があるわけで、誌面を充実させればさせるほど時給が安くなっていくわけです。

 しかしながら、この時って98点ぐらい取ろうとして無駄な努力をしていたんですよね。その後、78点から84点ぐらいをとにかくコンスタントに取ることが重要であることに気付くとともに、電話やメールで済ますことができる部分はそれで済ますといった効率化もできるようになってきます。

ブラックフリーランスから抜け出せたきっかけ

 自分の中で風向きが変わってきたのは、『テレビブロス』の編集業務が本格化し始めた頃でしょうか。「北斗の拳特集」を作った時のことです。「ケンシロウが『お前はすでに死んでいる』に類する言葉を言った回数」やら「ケンシロウが指をポキポキ鳴らした回数」などをコミックスの全巻読んで調べたりしたのですが、これも膨大な時間はかかったものの、自分が全部をコントロールしていると不思議とストレスがない。しかも、6ページの特集の予算は全部自分が押さえているため、他のスタッフへの配分も思いのまま。

 その時は明朗会計で「1ページあたりの編集費をオレが1万円取り、あとは面積によって分配しよう」と決め、ライターと2人で6ページを作ったのです。この時ようやく「ブラックフリーランス」は抜けた気持ちになりました。結局「ブラック化」しないコツはどれだけ自分が主導権を握ることができるか、にかかっているのです。小間使いのように命令をされる仕事っぷりを続けていたらブラックフリーランスからは抜けられません。

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