以前、社内に競争原理を導入しているリクルートやサイバーエージェントなどの事例を紹介したが、社員が正当に競争する仕掛けを作れば、日本人はかなり優秀な能力を発揮することができる。
ところが、今は世の中が「内向き・下向き・後ろ向き」で、「競争=悪」という風潮が強い。だから政府がやろうとしていることも逆さまで、「働き方改革」と称して残業時間の上限を一律に規制したり、勤務間インターバルを空けさせたりして、社員をロボットのように統制しようとしている。
英語では「内向き・下向き・後ろ向き」に考えることを「へそを拝む(navel contemplation)」という言い方をするが、まさに今の多くの日本人は下を向いて自分のへそばかり拝み、裕福ではなくてもそれなりに暮らせる現状を肯定しているように見える。だが、「坂の上の雲」を見上げて高みを目指さなければ、人も企業も国も成長するわけがない。
政府や連合の「働き方改革」論議は、日本を100%間違った方向に向かわせるものである。このままでは、日本はますます衰退していくだろう。
※週刊ポスト2017年11月24日号