ビットコインを筆頭とする仮想通貨に関して、日本国内に約30の取引所が存在している。仮想通貨市場はまだ歴史も浅いので、日本国内の取引所も信頼性という意味では、玉石混交の状況が続いてきた。そうした中で、2017年4月の改正資金決済法の施行により、仮想通貨取引所は金融庁の監視下に置かれることになり、9月からは取引所の登録制も始まっている。こうした仮想通貨取引の透明化をめぐる動きについて、フィスコデジタルアセットグループ代表取締役でビットコインアナリストの田代昌之氏が解説する。
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ビットコインなどの仮想通貨に関して、安全性の面で疑問視する声は根強い。それは、いわゆる「マウントゴックス事件」の印象に起因しているのかもしれない。
2014年2月24日、ビットコイン取引所として当時は世界最大級の取引量を誇っていた、東京・渋谷に本社を置くマウントゴックス社が突然、全取引を停止した。同社は同月28日には民事再生法の適用を申請すると同時に、衝撃的な発表を行なった。なんと、顧客の預かり資産約75万BTC(ビットコインの通貨単位)と現金約28億円が「なくなった」というのだ。当初、同社のフランス人社長は「ハッカー攻撃を受けた」と主張したが、後にその社長の横領が判明し、逮捕されたのだった。
この事件は日本が舞台だったこともあり、マスコミなどで連日報道され、大きなインパクトを残したのは間違いない。多くの人に「仮想通貨は危ない」と強く印象付けてしまったのだ。
しかし、この事件はビットコインそのものの安全性に問題があって起こったわけではない。端的にいえば、マウントゴックスの社長が顧客から預かった資産を盗んだというモラルハザードが原因だ。日本円の横領事件は枚挙の暇もないほど、しばしば起こっている。だからといって、「日本円は怪しい」とその安全性を疑う人はいないはずだ。