住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 今回は、SUUMOが行った「住みたい街ランキング 2017」で29位にランクインした「上野」(東京都台東区)について、ライターの金子則男氏が解説する。
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かつては“北の玄関口”と言われ、東北地方などから夜行列車に乗って上京した人にとっては、特別な意味を持っていた駅が上野です。今では東北・上越新幹線が東京駅まで乗り入れるようになったため、そういった色合いも薄れてしまいましたが、15番線ホームには、岩手出身の歌人・石川啄木が故郷を思って詠んだ「ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく」という歌が刻まれた歌碑が設置されています。都内にはたくさんのターミナル駅がありますが、“旅情”という単語が似合う駅は上野をおいて他にないでしょう。
新幹線の東京駅乗り入れ、さらに2015年に「上野東京ライン」(上野が始発駅だった常磐線、高崎線、宇都宮線の一部が東京駅方面に乗り入れるようになった)が走るようになったことにより、始発駅から途中駅になってしまった上野ですが、交通面の利便性は日本最高レベルです。
新幹線だけでも、東北・山形・秋田・北海道・上越・北陸新幹線とよりどりみどりで、東日本は完全に網羅。その他、JRのラインナップは山手線、京浜東北線、常磐線、宇都宮線、高崎線で、関東地方の主要路線がごっそり揃っています。その分、駅の構造は複雑で、方向音痴の方は苦労するかもしれません。これに加えて、東京メトロの銀座線、日比谷線、さらにほんの少し離れて京成の上野駅もあるので、悩まされることの多い成田空港へのアクセスもまったく問題ありません。
道路状況も良好です。国道4号線(昭和通り)や中央通りはそれぞれ広々としており、昭和通りの上には首都高速1号線が通っています。また、意外に思われるかもしれませんが、上野駅周辺は酷い渋滞スポットではありません。ただ、駐車場不足の感は否めないので、その点は注意が必要です。