目下、日本は戦後2番目に長い景気拡大局面にあるといわれても、「実感なき景気回復」といった方が頷ける人は多いだろう。各企業は史上空前の好業績をあげても、内部留保を貯め込むだけで社員の給料に回っていない。それではGDPの6割を占める個人消費の拡大も見込めない。
そんな危ういバランスが一度綻びを見せ始めれば、上昇局面にある日本株も大きく崩れかねない。
そうしたリスクのひとつが、2018年9月の自民党総裁選だ。衆院選圧勝で安泰と見られる安部晋三総裁再任だが、もしも退陣となれば、アベノミクスからの転換を意味する「ABEXIT(アベグジット)」が現実味を帯びる。そうなれば東証の売買代金の約7割を占めている外国人投資家の日本離れにつながりかねない。安倍一強の是非はともかく、外国人投資家は政治の安定を望んでいるからだ。
「外国人投資家が気にしているのは内閣の『不支持率』。衆院選後は支持率が不支持率を上回ったが、選挙前に不支持率が上回っていた時は売り越しが続いていた。安倍政権の失政が続き、来夏にも不支持率が上昇してくるようだと、外国人投資家は“総裁交代”を念頭に入れ、売りが相次ぐ可能性もある」(市場関係者)
有名な相場格言に〈もうはまだなり まだはもうなり〉というものがある。もう下がらないと思っても、まだ下がってしまう。まだ上がるだろうと思っていると、もう下がってしまう。相場は思い通りに動かないことを肝に銘じ、点灯するサインを見極めたい。
※週刊ポスト2017年12月1日号