たとえそんなに急いでいるわけでなくても、電車が遅れるのはイライラするもの。そんな時、「後ろの電車が遅れているので、時間調整いたします」「後続の列車が遅れているので、○時○分に発車いたします」とった車内アナウンスが流れることがある。前の列車が遅れているならともかく、後ろの列車が遅れているのに、なぜ時間調整する必要があるのだろう。
こういった処置は、首都圏など、ひっきりなしに電車が来て、なおかつ非常に混んでいる場合のみに行われるものだ。例えば、5分間隔で走っている列車が5分間遅れた場合、前の列車が時間調整を行わなければ、ホームには「通常の5分+遅れた5分」分の人が待機することになる。まずその時点で、乗客の安全が損なわれる可能性がある。
さらに、遅れた列車には、同様に「通常の5分+遅れた5分」分の乗客が乗ることになる。ただでさえ混んでいる時間帯に「+5分」の乗客が乗り降りすれば、当然、通常よりも時間がかかってしまう。すると、その列車はさらに遅れることになる。
そういった場合に、前を走る電車を時間調整させれば、遅れた列車だけに負担が掛からず、ある程度乗客を分散させることができる。ラッシュ時などに、電車を1本見送ったら、次の電車は空いていたということがあるが、それは遅れの原因となるもの。すべての列車の混雑度がなるべく均等になることが、定時運行には望ましいのだ。
ただし、そこまでしなくてはいけないということは、それだけ輸送能力が足りていないとも言える。日本の鉄道の定時運行率は世界一だが、「後続の列車が……」というアナウンスは、混雑率の緩和という課題の1つの象徴とも言えそうだ。