そこに置かれたのは、高級老人ホームのパンフレット。両親はすでにその施設の見学も終えていたという。そして父親はこう続けた。
「お前が嫌がるだろうと思って、父さんも母さんも結婚のことをあまりうるさく言わなかったが、いずれは結婚相手を連れてくるものだと思っていた。けれどもさっきの返事を聞いて、決心がついた。
私たちももう若くない。体が動かなくなってからでは遅いから、父さんと母さんは、この施設に入ることにする。だからお前はもう、親の心配をする必要はない。今の仕事を精一杯頑張りなさい。ただ、この施設に入るとなると、お前にほとんど資産は遺せない。そのことは了承してほしい」
Mさんは、「面倒を見なくていい、そのかわり資産も遺さない」と言われたことについて、「自分で撒いた種だとはいえ、一種の絶縁宣告ですよね……」と、その心境を告白。しかし仕事一辺倒の生活を今さら変えることは出来ず、一向に結婚相手が見つかる気配はないそうだ。