国税庁の最新のデータによると、2016事務年度(*注)は全国で1万2116件の相続税の実地調査が行なわれ、そのうち82%で申告漏れなどの「非違」(違法行為)が見つかって加算税が課せられた。
【*注/法人税、消費税及び源泉所得税の事務を実施するために設けた年度のこと。期間は毎年7月1日から翌年6月30日まで】
「相続税なんてお金持ちの悩みでしょ。うちには関係ない」
そんな風に考えている人が一番大変な目に遭う。2015年の相続税法改正で控除額が大幅に引き下げられ、相続税の課税対象は大きく広がったからだ。
それまでは夫が妻と2人の子供を残して死亡した場合、家や預貯金など相続資産(遺産)の総額が8000万円までは非課税で、相続税を取られるのはそれこそ“億”近い財産を持つ資産家だけだった。ところが、法改正以降は同じ法定相続人なら、4800万円(控除額は3000万円+法定相続1人につき600万円)を超える遺産があれば相続税を課せられるようになった。
課税件数は2015年は前年の年間約5万件(死亡者全体の4.4%)から、10万件以上(同約8%)に倍増した。国税OBで東京都内の税務署の資産課税部門を歴任した税理士の武田秀和氏が語る。