国税局の“相続税マルサ”は忘れた頃に突然現われる。それは「○×税務署です。相続税の件でお宅にうかがいます」という1本の電話から始まる。「臨宅(りんたく)」と呼ばれる実地調査の通告で、故人が亡くなって2年ほど経ち、遺産相続の手続きがとっくに終わってから行なわれることが多い。
税務調査官から根掘り葉掘り質問されるのは気が重い。家の中を寝室や引き出しの中まで覗かれるのは嫌だ。挙げ句、追徴課税が課されるかもしれない――。
メリットなど何一つない財務調査は誰だって避けたい。その願いを叶えてくれる“裏技”が存在する。それが「書面添付制度」だ。
相続税の申告書に、具体的に申告内容を記載した書面(税理士法33条の2で指定された書面)が添付されていれば、税理士に意見陳述の機会が与えられる。これにより調査前に相続人抜きで、税理士と調査官のみでの話し合いの場が設けられる。
この段階で調査官が相続人に抱いていた疑問を解決できれば、調査自体が省略される。また申告に誤りがあっても、この段階なら修正税額について「加算税がかからない」といったメリットもあるという。
不明点が解消されない場合は、残念ながら税務調査に移行することになるが、東京税理士会が2014年に会員の税理士・税理士法人に対して行なったアンケート調査によれば、書面添付による相続税の税務調査の省略率は70%に達する。