税務署職員は明細書のどの部分を見ているのか。明細書に記入するのは、自宅の土地・建物や預貯金から、生命保険金や車、さらにはゴルフ会員権、宝飾品など、故人が遺した「財産」だ。特に税務署職員が目を皿のようにして見るのが「預貯金」だという。
「税務調査で最も指摘しやすいのは『名義預金』です。たとえば生前贈与で子供や孫の口座におカネを振り込んでいても、実質的に故人が通帳や印鑑を管理していた場合は、“相続税回避の名義口座”と見なし、税逃れを指摘できる。KSKシステム(国税総合管理システム=*注)と銀行への調査を照合すれば、判断はさほど難しくない」(武田氏)
【*注/全国12か所の国税局と国税事務所、全国524ある税務署をネットワークで結び、個人と法人の財産情報を管理するシステム。不動産取引から給料の支払い調書、確定申告など膨大な財産情報を収集しており、申告漏れ、脱税摘発、滞納徴収などの業務で生かされている】
父親の遺品を整理していたら、コツコツと我が子(自分)のために積み立てていた子供名義の預金通帳が見つかった。それは“家族思いだった父の美談”に聞こえるが、税務署職員のフィルターを通せば“相続税逃れ”となりかねない。武田氏はこうアドバイスする。
「基本的にKSKシステムで資産を捕捉されているという前提に立てば、“判明した範囲のあらゆる相続資産を記入した”という姿勢を示しておくこと。たとえば故人が保管していた預金(貯金)通帳が複数あった場合、少額の残高であっても記入しておくほうが好印象を与えます」
記録が明確に存在するものは“誠実すぎるほどオープンにすべき”というのだ。