あまねく相続税を取る──そんな税務署の決意が読み取れるデータがある。全国で「臨宅」と呼ばれる実地調査が行なわれた件数は、2016事務年度(*注)で1万2116件。そのうち8割以上で申告漏れなどが“摘発”され、加算税が課せられた。課税件数で見ると2015年は10万件を超え、前年から倍増した。
【*注/法人税、消費税及び源泉所得税の事務を実施するために設けた年度のこと。期間は毎年7月1日から翌年6月31日まで】
税務署職員が納税者を訪問調査するかどうかは、どこで判断されるのだろうか。実は「相続税の申告書」が提出された時点である程度決まっているという。
申告書は、被相続人(故人)の死亡翌日から10か月以内に税務署に提出しなければならない。そう説明するとごく簡単な手続きのように思えるが、現実は頭が痛くなるほどの複雑さを伴う。
申告書は法定相続人全員で1通を作成し、全員の押印が必要だ。また、申告書は添付書類まで含めれば20校近くにもなる。その全てを相続人が確認する手間がかかる。だが、そうした煩雑な書類の記入次第で、相続税は重くも、軽くもなる。中でも税務署職員が特に注意深く見る書類がある。国税OBの税理士・武田秀和氏が語る。
「とりわけチェックが厳しいのは、『相続税がかかる財産の明細書』です。税逃れを疑いながら念入りに調査する習慣が、職員に叩き込まれています」