夫婦水入らずより“おひとりさま”
では、精神的な幸福度を得られる分岐点はどこにあるのか。
「老後は夫婦水入らずで」あるいは、「子供と孫に囲まれて」こうしたライフスタイルが高齢者の幸福度を示すバロメーターとして、よく引き合いに出される。
しかし、会社人間だった夫がリタイアした途端に妻に「あなたと四六時中顔をつきあわせて生活するなんて耐えられない」と言われ、年金分割を要求される熟年離婚は跡を絶たない。夫婦水入らずの生活は必ずしも幸福とは限らない。
実は老後は夫婦や家族同居より、“おひとりさま”の方が幸福度が高いという指摘がある。大阪府門真市医師会の相談電話や診療を通じて60歳以上の高齢者約1000人に生活の満足度を調査した辻川覚志・医師が語る。
「独居の高齢者は幸福度が低いと思われていますが、実態は違います。かつてはサザエさん一家のような大家族が幸福でした。理想をいえば今でもそうなのでしょうが、実際は子供は仕事で忙しく、孫はスマホに夢中で家族のふれあいが薄くなっている。
それなら、同居して気を使うより、住み慣れた場所で自分のペースで生活できる方がいいと1人暮らしに満足している人が多い。子供から“一緒に住もう”と言われて断わるケースも少なくありません」
ただし、同じ“おひとりさま”でも、「幸福度」の分岐点があるという。
「高齢者の1人暮らしには地域のネットワークに仲が良い友人が2~3人いることが重要です。その中でも、何でも周囲に頼りがちの人は幸福度が低く、できることは自分でやるんだという気持ちが強い人の方が幸福度は高いですね」(辻川氏)
※週刊ポスト2017年12月15日号