今回の税制改正で狙われたのは中堅サラリーマンの所得税だ。政府は、「年収850万円」を超えるサラリーマンを〈高額所得者〉と認定し、2018年から給与所得控除を縮小する方針を固めた。基礎控除を10万円増やす一方で、給与所得控除は一律10万円減額、控除額の上限も220万円から195万円に引き下げられる。年収900万円で年間1万5000円、950万円で3万円、1000万円では4万5000円ほどの増税になる計算だ。
「うちは850万円も給料をもらってないから」とホッとするのは早すぎる。政府は税制改正のたびに所得税増税(給与所得控除縮小)となる高額所得者の“認定基準”を引き下げているからだ。
「給与所得控除はかつては上限がなく、収入が増えるほど控除額は大きくなった。それが2013年から控除総額に上限が設けられ、2016年からは年収基準が定められて1200万円を超えるサラリーマンに増税、2017年は年収1000万円、そして2018年からは年収850万円と政府の金持ち認定基準が毎年150万~200万円ずつ下げられています」(経済ジャーナリスト・荻原博子氏)
このペースでいけば、来年の税制改正では年収600万円台、2年後には年収400万円台で高額所得者に認定されてしまう。国民の実質所得は減っているのに、増税に次ぐ増税で現役世代がリタイアする頃には貯金も残らずに「老前破産」に直面し、それでも日本は国民全員が金持ち認定された“幸せな国”になる。
「3年前には消費税増税で低所得者の懐にダメージを与えながら、今回は“金持ちに負担してもらう”と中間層以上に増税、そして2年後にはまた消費税を上げる。結局、所得格差是正といいながら場当たり的に取りたいところから税金を取っているだけ。本当におかしなやり方です」(荻原氏)
※週刊ポスト2017年12月22日号