今回の税制改革でまずターゲットとなっているのは、年収850万円超の“高所得者”扱いされたサラリーマンだ。2018年から給与所得控除を縮小する方針で、年収900万円で年間1万5000円、950万円で3万円、1000万円では4万5000円ほどの増税になる計算だが、それ以外にも増税の標的となっている層がある。
それが、「働く高齢者」だ。政府は人生100年時代だと高齢者に“死ぬまで働け”と勧めながら、年金以外に給料など1000万円以上の所得があれば「公的年金等控除」を引き下げることで増税する。「給与控除と年金控除の二重に税の優遇を受けている」というのが理由だが、この理屈は甚だおかしい。ベテラン社会保険労務士が語る。
「それだけの所得がある高齢者は、在職老齢年金の報酬比例部分を全額カットされているはずです。現役時代の給料水準も高いから、おそらく月額16万円、年間200万円近い年金をもらい損ねている。この年金減額分を所得税に換算すると、税率20%以上の重加算税を毎年納めているようなもの。“あなたがたは税を優遇されている”なんていえないでしょう」
重加算税を課されるのは所得が1000万円を超える人だけではない。在職老齢年金の受給額をカットされている働く高齢者全員が、知らないうちに“所得税の重加算税”を課されているといえるのだ。