中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「ウチは貧乏だから…」幼少期に培われた金銭感覚に感謝する日

 父親は「三流会社」に勤めるダメサラリーマンで給料が安く、麻雀ばかりやっているために無駄なカネを使っている、と言われていました。さらには「国分寺大学」なるバカ大学出身のため、出世の道もないので我が家にはお金がない、ということを言っていたのです。父親は海外赴任を長きにわたってしていたため、直接話を聞く機会がほとんどなかったので、母親は我々姉弟を騙しやすかったのかもしれません。何しろ口裏合わせも必要なく、彼女が考えたストーリーだけを伝えればいいのですから。

 実際のところ麻雀の部分はさておき、他は嘘だったのですが、私は小さいながらも「オレと姉は他の家の子供とは違い、新しいおもちゃをねだったり、年末のスキー旅行に連れていってもらうよう頼んではいけない」という感覚を抱くようになりました。お風呂の水を入れているのを忘れた時は「水道代を少しでも回収しなくちゃ……」とばかりに湯船の水面に口をつけ、水をゴクゴクと飲みました。完全に「我が家は貧乏」という洗脳をされてしまっていたのです。

10歳の段階で「抑えられた物欲」

 だからといって母親は一切のお金を使わせないということではなく、小学校に年1回やってくるチャリティーの面もある文具の共同購入の時は、必要なものをたくさん買ってくれました。ひもじい思いをしたこともありません。年に1回は九州の祖父母の家に帰省させてもらいました。今考えると親子3人で飛行機、新幹線、ブルートレインに乗るのは相当なお金がかかったことと思います。しかし、必ず九州には連れていってくれた。

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