業界の動きに加え、法整備も始まりつつある。今年4月には「ライブ・エンタテインメント議員連盟」が報告会を開催し、法案の概要もまとめられた。主催者が転売の禁止を明示し防止策を講じているにも関わらず、転売目的でチケットを入手したり、高額で販売したりすることを禁止し、違反者にはダフ屋行為と同程度の罰則を検討しているという。
転売業者がいなくなるとコンサートが減る?
高額転売を防止できれば、不当に高いチケット代を払わされるファンが減ることとなる。また、ダフ屋がいなくなれば、その分チケットも取りやすくなるかもしれない。ファンにとってはメリットが大きいと思われるが、話は単純ではないという。音楽業界に詳しいフリーライター・A氏が話す。
「ファンの中では、ネットオークションでしかチケットを買わないという人も少なくありません。その大きな理由は良席を選べるということ。一般的にコンサートのチケットは、ファンクラブで先行販売し、その後にプレイガイドで一般販売されます。ファンクラブのチケットのほうがステージに近い良席にとなり、プレイガイドで買うとステージから遠い席となることが多い。
とはいえ、チケット購入時に席を選べることはまれで、実際に購入してみないとどんな席になるかわからないというのがほとんど。どうしても前の方で見たいというファンは、席が選べるネットオークションや転売業者を利用するというわけです」
高い料金を払ってでも良席で見たいというファンにしてみれば、転売業者はありがたい存在でもあったのだ。また、転売業者がいなくなることで、コンサートの数が減ってしまう可能性も指摘されている。
「ネットオークションでよくあるのが、チケットが定価割れを起こしているケースです。つまり、コンサートのチケットが供給過多となることも珍しくないのです。定価よりも安いのならコンサートに行ってみようという人はいるかもしれませんが、それが定価でしか買えないとなると、空席が目立つケースも増えるかもしれません。アーティストとしては、ダフ屋がある程度のチケットを買ってくれるために、席が埋まるという現状もあるわけです。
変な話、ダフ屋がチケット代を相場に近づけてくれるということでしょう。もしもダフ屋がいなくなると、チケットがまったく売れないという可能性も出てくるので、アーティストサイドとしても大きな会場でのコンサートや人口が少ない地方での公演を組みにくくなるはず。小さな会場ばかりだとチケットの争奪戦は激しくなるだろうし、地方の音楽ファンが蚊帳の外になってしまうかもしれない」(A氏)