生きていくのに必要な「お金」の話を、若い女性のためにしたいと思いました。
でもそれは、キャリアウーマンやワーキングマザーの、いわゆるサクセスストーリーでは説得力がありません。女性も頑張ろう、たくさんお金を稼ごう、地位を上げよう、という話とも、ちょっと違うからです。
特殊な能力の女性が頑張った、という話ではなく、あくまでも客観的に冷静に、いまの日本の現実を語ってもらう必要があります。
2億円のポイントは「働き続けた場合」
そんなとき、この本の著者である橘玲さんが、「専業主婦になって3億円をドブに捨て、お金がないからと(当たるはずのない)宝くじ売り場に並ぶのはおかしい」と書いているのを読みました。橘玲さんは、お金、幸福論、日本人論などのテーマで多数の著書がありますが、私が言ってほしいことは、まさにこれだ!と思いました。企画の内容を時間をかけてお話しし、橘さんがその主旨に興味を持ってくれたことで、本書が生まれることになりました。
この本の内容がネットニュースなどで採り上げられると、「2億円も稼げるわけがない。どういう根拠なの?」という書き込みが数多く見受けられましたが、大卒の女性が60歳まで働いたとすると、平均の生涯年収は2億1800万円(退職金除く)。これはきちんとした現時点の統計に基づいているので、ウソでもなんでもありません。
この中には、独身の人も、共働きの人も、育休や時短を取った人も含まれますが、ポイントは、働き続けた場合、ということです。誰もが働き続けて、2億円稼がなければいけない、と言いたいわけではもちろんありませんが、ひとつの基準にはなるでしょう。
仕事は続けたかったけど、保育園は見つからず、会社の居心地も悪く、泣く泣く辞めた。専業主婦になりたかったわけじゃない、という意見もたくさんありました。
確かに、日本では男女格差はひどいし、ジェンダーギャップ指数は144か国中111位(2016年)で、インドよりも中国よりも下です。でも社会が悪いと言っていてもしょうがないので、この状況の中で、なんとか「幸せに生きるにはどうしたらいいか」を考えたほうが得策です。
そのためには、「現実」を知っておいたほうがいい。耳に痛い話もあるかもしれませんが、いま何が起きているのかを、冷静に徹底的にお伝えすることにしました。