女性セブンの名物アラカン記者“オバ記者”こと野原広子が、同世代女性のお金事情について語る。
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60才で大手不動産会社を定年退職した友人・M子(61才の夫・34才の息子と埼玉県で3人暮らし)が、やっと得た仕事は、マンションの管理人。仕方なく始めた仕事だけど、すぐに汗をかくよろこびに目覚めた、という話を前回した。
けど、それを独身の私がやるとなると問題は収入。都の最低時給958円でめいっぱい働いたところで、手取り約15万円。家賃、光熱費、通信費を払ったら、この都心でどうやって生活していくのか…。その答えを探して、いざ!
映画出演もしたプロダンサーが深夜の食品工場でバイト
「家賃なら安いところへ引っ越せばいいけど、私は景気のいいときに分譲マンションを30年ローンで買ったんで、売っても、残るのは借金だけ。引っ越しもできなかった」
そう言うのは、幼友達でダンス教師のK美(59才・独身)。最盛期は分刻みのレッスンで、月収40万円以上稼いでいたが、今、生徒は日に1~2人。月収10万円あればいい方だそう。
「まず貯金を取り崩し、貴金属など売れるものは全部売って月9万円のローンを払っていたけど、それが底をついたとき、夜間の食品工場にパートに出たの」
1年半前のことだ。時給1200円。夜10時から深夜2時まで、4時間の倉庫作業を週に5日で、月収は約9万円。ダンス教師の仕事と合わせても、20万円に届かない。
かつて、ダンスのプロB級が目前で、競技会などのデモンストレーションで数曲踊れば20万円の謝礼が出た。衣装は1着40万円。市川崑監督の映画『鹿鳴館』の舞踏会シーンで踊ったこともある。
「どんなことがきつい?」
長澤まさみの25年後のような顔立ちのK美。華々しい経歴を知っている私は、現状をどう思っているか、聞かずにいられない。
「パートの面接官からは『あなたのような仕事をしている人がどうして?』と必ず聞かれ、仕事仲間からもそう。そのたびに、『生徒の高齢化で月収が落ちた』って、ありのままを話すしかない。ああ、またその質問かと胸がチクンと痛むんだけど、月々のローンを払って生活しなきゃならない方が先。必死よ」
慣れない伝票整理や、引き継ぎの仕方でミスを連発して、「これが続くようだったら…」と暗にクビを警告されたこともある。
だけど、「体を動かすのが苦にならないし、わからないことはすぐに責任者に聞く」という姿勢を、「やる気がある、働き者」と評価する社員もいた。首の皮一枚でクビをまぬがれたと聞かされたのは、ずっと後のこと。