中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

池波正太郎『男の作法』 「チップ」の項目を読めば社会を幸せにできる

 池波さんは、こうしたことを考え、実行することが、「男をみがく……」ということだと述べ、自分本位ではなく人間は他人によって生かされていることを認識したうえで「自分も世の中に出来る限りは、むくいなくてはならない……」と考えるべきだと説きます。

 いやぁ、まさにその通り! この件についての分かりやすい解釈は「幸せな気持ちは連鎖する」ということになるでしょう。しかも、それが「タクシーで100円多く払う」くらいのことで達成できるわけです。

 基本的に街中での諍いってものは大した理由からは発生しません。肩がぶつかった、足を踏まれた、イヤホンの音がうるさかった――。この程度のことから「てめぇ、なんじゃ、こりゃ!」「うっせー、ボケ!」「よーし、外に出ろ、この野郎!」となるわけですね。私は池波さんのこうした細かい他人への思いやりの連鎖が諍いも減らすのでは、と思っています。

 昨今「コスパ」という言葉が幅を利かせています。よく使われるのは飲食店ですが「質の割には安い」か「量の割には安い」のどちらかを満たす言葉として「コスパがいい」が使われます。

 多分、「タクシー運転手に100円多く払う」というのは社会全体を考えると案外コスパがいいのでは、と思います。だからこそ我々は普段お金を使う場で「これをすれば社会は良くなるか」を考えてもいいのではないでしょうか。それこそ、普段は割り勘であったとしても、たまたまその日、「競馬でスッてしまいまして……」みたいな友人がいたら「しょうがねぇなぁ。今日はオレが全部出してやる!」と会計をすべて引き受けたりする。あとは飲み会で割り勘にした時に一人あたり3223円だったとし、幹事が1円でもキッチリと割るタイプだった場合に「めんどくせーからオレはこれで。幹事はお釣りもらっといて」と3500円を出して他の人は3200円を出すようにしたり。

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