しかも今や日本国債の4割は政府の子会社である日本銀行が保有しており、これは償還(返済)も利払いも必要ない。親会社・子会社間のお金の貸し借りは連結決算で相殺されるためだ。また、日本国債は100%円建てであり、そこが実質破綻したギリシャと決定的に違う。自国通貨建て国債のデフォルト(債務不履行)があり得ないことは、かつて財務省自らが海外格付け会社に主張したことだ(*)。
【*2002年4月30日付の海外格付け会社への意見書で、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」などと抗議した。】
にもかかわらず、なぜ政府はPB黒字化を打ち出すのか。それは「健全財政」を金科玉条にする財務省の思惑に他ならない。緊縮財政を図るとの名目で、財務省は各省をコントロールできる。財務省は旧大蔵省時代から、緊縮財政に成功した官僚が省内で出世する仕組みになっており、それが続いているというだけだ。
【PROFILE】三橋貴明●1969年熊本県生まれ。東京都立大学(現・首都大学東京)経済学部卒業。2008年に中小企業診断士として独立。著書多数。近著『財務省が日本を滅ぼす』(小学館刊)が話題。
※SAPIO2018年1・2月号