四つ目は、科学技術予算。2000年を100とした科学技術関係予算の推移を見ると、日本はかろうじて横ばいを維持しているだけでほとんど増えていない。他の国との比較で見ると差は歴然だ。特に中国はかなり科学技術予算を増やしている。中国が11倍以上に予算を拡大したのに対し、日本はわずか1.05倍である。
日本の大学や企業に所属する研究者は非正規雇用が多くなり、まともに基礎研究が行えなくなっている。これまで日本の屋台骨を支えてきた科学技術でさえ劣等国化しつつあるのだ。
科学技術のような、効果が見えにくいものにこそ政府が予算をつぎ込むべきである。これをやらないことこそが、本当の「将来世代へのツケの先送り」なのだ。今の日本が、過去の日本人の投資で成り立っていることを忘れてはならない。
国民が正しい認識を持って財務省の刷り込みから目覚めない限り、日本はインフラがボロボロで、防衛力も弱体化して他国からの侵略に怯えるような「科学技術劣等国」となることは避けられないだろう。
【PROFILE】三橋貴明●1969年熊本県生まれ。東京都立大学(現・首都大学東京)経済学部卒業。2008年に中小企業診断士として独立。著書多数。近著『財務省が日本を滅ぼす』(小学館刊)が話題。
※SAPIO2018年1・2月号