ジョブズはカッコよくてトランプは毛嫌いされる
──経済学者の調査では、幸福度が変わらなくなるのはアメリカでは7万5000ドル、日本では800万円というデータが出ているという。面白いことに、為替レートで換算すると日米でその金額はほぼ同じだ。
橘:あなたが独身だとして、年収800万円で幸福度がマックスになる理由は、ちょっと考えればわかるでしょう。彼女(彼氏)とおいしいものを食べ、たまにはブランドものを買い、年に何回か旅行にも行くという「人なみの幸福」は、年収800万円ならお金を気にせずにできます。そしていったんこの水準に達すると、レストランをミシュランの星付きに変えてもたいして幸福度は上がらない。
ゆたかな社会にはお金持ちがたくさんいるのですから、必然的にお金の価値が下がっていきます。それと同時に価値観が多様化し、「豪邸に住んでブランドで身を包み高級外車を乗り回す」という成金はあまり尊敬されなくなる。それよりも、ツイッターのフォロワー数やフェイスブックの「いいね」の数が評価の基準になったりする。最近の若いひとたちは、フェラーリやランボルギーニに乗っている人を見ても、「そういう趣味なんだ」と思うだけのようですから。
こうした価値観の変化は「強欲」の象徴とされるアメリカでも同じで、もっともカッコいいのは(アップル創業者)スティーブ・ジョブズのシンプルなライフスタイルで、ドナルド・トランプのような古いタイプの「大富豪」はリベラルな知識層からは徹底的にバカにされ、毛嫌いされています。