企業が従業員の賃金を絞って内部留保を増やす理由
このことは、現在の日本経済の致命的な問題を浮き彫りにしている。GDPはそれほど増えていないのに、企業利益は非常に増えている。たとえば、法人企業統計を見ると、2016年末の企業がため込んだ内部留保は406兆に達し、前年度比で28兆円も増加している。そのうち211兆円が現預金で、こちらも前年度比11兆円も増えているのだ。
その一方で、安倍政権下の5年間で労働者の実質賃金は4%も下がっている。アベノミクスで経済のパイは確かに大きくなったが、企業はとてつもない儲けを従業員に分配していないどころか、取り分を削ってしまったのだ。これでは企業の利益が増えるのは当然のことである。
従業員の賃金を絞って内部留保を増やしている理由は、現在の企業の役員報酬の多くが利益に連動するようになっていて、しかも「ストックオプション」が一番の儲けのネタになっているからだ。これは新株引き受け権といって、株価が上がるとその差額がフトコロに入ってくることになる。つまり、内部留保を貯め込むほど企業の価値が上がり、株価も上がって自分たちが儲かる仕組みだ。この構造により、全体的に株価が上昇したと分析できる。
しかし、こうした状況は長続きするはずがないと考えている。ほとんどの企業は最終的に消費者を相手に商売をしているのだから、労働者=消費者イジメは巡り巡って最終的に自分に返ってくるからだ。