──テレビ業界では結婚している女性を探すほうが難しいというのはかなりの衝撃だが、この傾向は「年収」でより鮮明になる。前述の総務省の調査では、未婚率が10%以下(10人に9人は結婚している)は、年収150万円以下の女性と、年収800万円以上の男性で、女性は年収が高いほど、男性は年収が低いほど結婚していない。そして年収1000万円以上の「ハイスペック女子」の未婚率は一気に30%以上に跳ね上がっているのだ。ただし、「この結果をもって、『貧乏な女は結婚し、貧乏な男は結婚できない』とか、『高収入の男は結婚できるのに、高収入の女は結婚できない』と決めつけることはできません」と橘氏はいう。
橘:この数字は45~54歳の年収別未婚者数の割合なので、結婚するかどうかを決めたのは10~20年前ということになります。そう考えると、原因と結果はじつは逆で、「年収が低い女性が結婚している」ではなく、「結婚していったんキャリアが切れた女性が年収の低い仕事をしている」のでしょう。またハイスペック女子が結婚できないのではなく、独身のまま仕事を続けてきたから年収が高くなったと考えるのが自然です。
興味深いのは、年収600万円を境に女性の未婚率が下がり、年収900万円では未婚率16%と、年収1000万円以上の半分以下、年収200万円台の女性と変わらないほど結婚していることです。
厚生労働省の国民生活基礎調査(2010年)によれば、年収1000万円以上の収入のある世帯は12.0%、18歳未満の児童のいる世帯にかぎれば16.6%と6世帯に1世帯です。
それに対して国税庁の民間給与実態統計調査結果(2015年)では、サラリーマンの平均年収は男性でも520万円(女性は270万円)、年収1000万円を超える高所得者は男性でも5%程度しかいません。子どものいる6世帯に1世帯が1000万円超の年収があるということは、夫婦ともに一定の収入のある裕福な共働き世帯が増えていることを裏づけています。
このことは、年収1000万円のひとよりも、年収500万円のひとのほうが圧倒的に多いことから説明できます。先の民間給与実態統計調査結果では、給与収入が年500万円以上は男性で41.1%、女性でも10.5%います。当たり前の話ですが、高収入でハイスペックな男を運よくゲットして専業主婦になるよりも、夫と妻の2人で働いたほうが「世帯収入1000万円」の壁をずっと容易に超えることができるのです。