安倍政権は「女性が活躍する社会」を標榜し、「女性が子どもを産んでも働き続ける社会」の実現を目指している。人口減と超高齢化社会の到来で今後ますます人手不足になるのは必至であり、これまで働いてこなかった専業主婦にも働き手になってもらおうというわけだ。
「だが、日本では子どもを産んだとたんに女性を取り巻く環境が大きく変わり、それまでと同じように働き続けるのは難しいのが実状です」──そう語るのは、新刊『専業主婦は2億円損をする』(マガジンハウス刊)で日本特有の専業主婦という生活スタイルの問題点を鋭く突いた作家の橘玲氏だ。
同書では、女性の就業率(労働力率)の国際比較データが掲載されている。北欧のスウェーデンでは25~60歳までほぼ9割の女性が働いているのに対し、日本では25歳までは8割の女性が仕事をしていても30代にかけて7割程度まで落ち込み、40代からまた上昇する「M字カーブ」を描いている。それが意味することは何か、橘氏が語る。
橘:このデータは、日本の女性が出産や育児を機に専業主婦になり、子どもに手がかからなくなってパートなどに出ることを示しています。欧米の女性たちは子どもが小さいときも働き続けており、M字カーブができる先進国はいまや日本くらいです。
──なぜ日本の女性だけが出産後も同じように働き続けられないのか。多くの会社では女性社員が出産後も働き続けられる制度を用意しているが、そこに「落とし穴」があるという。
橘:日本の会社のなかには「小さな子どもがいる女性社員を男性や独身女性と同じように働かせてはかわいそうだ」との理由から「マミートラック」と呼ばれる「ママ向け」の仕事を用意しているところがたくさんあります。