老後の資金運用を考えると、株価が大きく上がらなくても、「配当利回り」が有利な安定株で長期運用するのも魅力が大きい。ファイナンシャル・プランナーの森田悦子氏がいう。
「初心者の方はNISA(少額投資非課税制度)で大型株を選ぶケースが多い。2014年1月にキヤノン株を約33万円で購入した投資家はこれまでに5万9000円の配当を受け取り、4年間の利回りは17%になっています。途中、株価が下がって含み損になった時期もありますが、現在の株価は約43万円で含み益も10万円。いまからキヤノン株を買っても配当利回りは3.7%もある。ちなみに日経平均全体の平均配当利回りは年1.6%で定期預金よりはるかに高い」
長期の運用を考えると、この株の配当利回りと定期預金との金利差は非常に大きい。老後の資金計画のポイントは、資産を増やすのではなく、蓄えを取り崩しながら如何に長くもたせることができるかが重要になってくる。
総務省の家計調査によると、60代の年金生活世帯(夫婦2人)の生活費は月額約27万円。年金の受給額は厚労省の標準モデルの夫婦で約22万円だから、毎月5万円ずつ蓄えを取り崩して生活費にあてる計算だ。25年間なら最低1500万円の蓄えが必要になる。1500万円の資産を全て預貯金で運用した場合、25年間でも金利は数万円だ。
しかも、今後、年金が減額され、社会保険料など負担がかさむうえ、夫婦のどちらかが入院や介護が必要になれば出費がさらにかさんで蓄えが底を尽き、老後破産に直面しかねない。