一方、2018年には、株価の上昇が続く可能性もあるが、ただし、20%前後下落する可能性もあるとしている。その理由として、以下の点を挙げている。
【1】市場平均PERが高い。今年初めのCAPE(ノーベル経済学賞受賞者であるシラー教授が考案した指数で、過去10年間の物価変動を調整したPER、Cyclically Adjusted Price Earnings Ratio)は33.38倍に達しており、これは2001年のITバブル崩壊前の最高水準に次ぐ値であり、1929年世界恐慌前のバブル時期の水準を超えている。
【2】アメリカ経済は既に、今回の景気回復サイクルに関して後半に差し掛かっている可能性があり今後、景気回復速度が更に高まるといった可能性は低い。これは企業業績に関して影響を与えるだろう。足元では、消費が景気回復を支えているが、それは株高による資産効果と密接な関係がある。一旦株価が下落すると、アメリカ経済は、はっきりとした減速感が出てくるであろう。
【3】アメリカ経済の成長速度は潜在成長率を超えて久しい。供給力の不足は物価上昇を招く可能性がある。一旦コアCPIが上昇すれば、FRBは金融引き締めを加速するだろう。流動性のひっ迫、金利の上昇が株価に悪影響を与えるだろう。
栄枯必衰。2018年のアメリカ株式市場は大きな不確実性に包まれている。投資家は株高に対する警戒心を持ち、リスク防止に努めるべきだと結んでいる。
この小論文は一学者の意見に過ぎないが、人民日報に掲載されている以上、中国共産党の見方と言って差し支えないだろう。“アメリカ市場のリスク”に関して、我々日本人投資家も、頭の片隅に入れておいても良いかもしれない。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサル ティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。